カイゼン

トヨタがトヨタである理由

別段の意図があるわけではないが、春闘でトヨタ自動車が果たしている役割を高く評価したい。12日、春闘が山を越した。電機や重工、鉄鋼業大手では労組の賃上げ要求に満額回答が相次ぎ、前年に続いて高水準となった。

今後は、賃上げの機運が中小企業の労使交渉に波及するかが、焦点となった。
とりわけ、トヨタ自動車の5年連続満額が春闘を牽引したのは間違いない。
歪なインフレです。物価上昇に見合った賃上げをする以外に、この国の景気を正常化することはできません。そんなことは誰もがわかっていることです。

でもそう簡単にはいかない。そのトヨタ自動車ですら、満額回答するにも「生き残りをかけ、一人ひとりの働き方を変えるという思いで話し合いを重ねた」結果の最後の労使協議会だったと語る。

現実は、昨年発覚した認証不正問題では管理職と現場の意思疎通の不足と指摘され、BYDなどの中国メーカーは徹底した成果主義や短期開発でEV化の攻撃をかける。内外で多様なリスクと隣り合わせにいるという自覚から、トップは「これからもトヨタは大丈夫、と思ってたら足を掬われる」と危機感をあらわにしている。

でも、私はトヨタはさすがトヨタだと思う。過去日本を牽引した世界的企業とは違う。どこが違うのか。自動車業界の裾野は広い。下請け業者という言葉は使わないそうだが。トヨタは直接取引のある1次仕入れ先企業には部品購入時の価格転嫁を進めている。賃上げが可能な価格に引き上げるためにだ。独り占めしないってこと。こんな大企業は今までにない。

それだけではない。2次以降の仕入れ先企業へは、原価低減を支援することで賃上げの原資づくりを促す努力をしている。例えばトヨタの生産方式といえば「カイゼン」である。一次仕入れ先企業からの紹介でトヨタの「カイゼン部隊」を派遣・作業効率の向上を直接指導している。

ある2次仕入れの経営者は「おかげで生産性が6%向上。省人化につながった」「それで生まれた余力を賃上げに振り向けることができた」と語る。
日本のものづくりを強化するってことだ。素晴らしいと思いませんか。

もちろん、綺麗事だけではない。6万社に上る2次以降の仕入れ先との価格協議にまでは手がついてない現状だ。それでも下請けの賃上げに本腰を入れるトヨタは大したものだと思う。これこそ日本のリーディングカンパニーだ。

春闘で満額回答を出した。日本の大手企業もトヨタのようにとは申さないが、
少なくとも「自分さえ良ければ」ではこの国が良くならないことを自覚すべき。政府も中小零細企業の賃上げが課題だといっているのではなく。
トヨタをもっと評価すべきだ。

積極的に下請けの全てにまで賃上げを促進しようとするトヨタ・カイゼン方式に敬意を表す。その姿勢に学ぶような施策を講じて欲しい。新聞メディアもそこをしっかりと監視し、報じて欲しい。歪んだインフレを是正することこそ、この国の景気回復の原点だから。Goto

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