食は哲学です。

春を食す。刺身を味わう、日本料理の文化に触れてみます。

まだ2月。寒気はなお居座るが、光はどこか柔らかい。スーパーの店先には
蕗のとう、たらの芽、こごみ、うど。春の使者が、静かに並び始めました。

人の体は、食べているものでできている。
「腹が膨れればいい」は、命に対する無頓着です。何を口にするかで、
明日の体が変わる。先達は、食を軽んじるなと教えました。若い人にはぜひ頭の隅の置いて欲しい。

春野菜の苦みは「目覚め」、甘みは「希望」。冬に溜め込んだものを流し、
新しい巡りを呼び込む。季節を食すとは、自然の循環に自らを重ねることです。

春野菜の天ぷら(大好物です)は、その瞬間の命を衣に閉じ込める知恵。
高温の油で一気に揚げ、塩でいただく。ほろ苦さの奥に、ふっと甘みが立つ。
命をいただく緊張と、解き放たれる歓びが同居します。

日本料理の文化。刺身を頂く作法ってご存知か。刺身は生魚を食す。ツマは飾りではありません。「もって菊」(皇室の紋章)は花びらを一枚ずつ外し、刺身に散らし、醤油に浮かべる。魚の命への敬意です。大根、しその葉、わさび、紅タデは薬味であり、毒消し。ともに食してこそ理にかなう。

ひとりの食卓なら自由でよい。しかし人と囲むなら、文化に則る。
刺身を頂く作法は窮屈さではなく、共に生きるための知恵です。

季節の変わり目、体調を崩す人が増えています。
私の年齢になれば、細胞は日々静かに幕を引く。日々数千と・・・
それでも、体に良いものを食べ、大いに笑い、上機嫌で過ごす。

笑いは血を巡らせ、心をほどき、免疫を整える。
細胞の“死亡速度”は、きっと一割は遅くなる。いや、いくつかは復活するかもしれない。少なくとも、ウイルスが寄りつきにくい体にはなる。

食は哲学です。何を選ぶかは、どう生きるかに通じる。旬を選ぶことは、今を選ぶこと。苦みを受け入れることは、試練を糧にすること。
甘みを味わうことは、希望を信じること。(ちょっとキザかな)

今夜は、春野菜の天ぷらに熱燗を。月を愛でればなおよし。
盃を傾け、季節の気配に静かに耳を澄ます。春は、もうすぐそこ。
命を敬い、笑い、上機嫌で、春を迎えたいものです。 Goto

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