地方企業の淘汰

最低賃金引き上げ・・・地方経済は耐えられるか?

最低賃金が過去最大の幅で引き上げられ、全国加重平均は1121円となった。
政府は1118円を想定していたが、それを上回り、昨年比6.3%である。
各都道府県の審議会は物価高騰に対応しようと必死に努力し、39道府県が国の目安を上回った。まさに地方も背伸びをして「生活を守ろう」とした結果だと受け止めたい。

例えば岩手県。審議会は過去最大の79円引き上げを決めた。使用者側の委員が反発して退席する中でまとめた答申である。それでも水準は1031円。全国では下から8番目にとどまる。低い県は高知・宮崎・沖縄の1023円(それでも千円は超えた)これが現実だ。新聞各紙は「人材流出に歯止めをかけるためのギリギリの努力」と評価する。

しかし、それは違う。東京1226円・神奈川1225円。この首都圏水準を見れば若者の都会志向が変わることはない。最低賃金の上げ幅が地方定着につながると考えるのは幻想だ。

ただし、今回の引き上げは地方で働く人たちの確かな福音でもある。
賃金が上がらなければ生活は苦しい。さらにあげていくべきだと私は考える。
だが同時に、それは中小零細企業の淘汰を意味する。最低賃金を守れない企業は市場から退出せざるを得ない。大企業と中小企業の二重構造が変わらないまま、最低賃金だけを引き上げれば「地方に屍累々」という結果になりかねない。
だが、これはゾンビ企業を整理することでもあり、淘汰再編は必ずしも悪ではない。

問題は政府にその覚悟があるか、という点だ。現状では厚労省も政治家も、メディアの声に押され、地域の現実を無視したまま「市場に任せる」姿勢が透けて見える。政策としての一貫性も哲学も欠けている。これでは弱いところがますます弱くなる。

私は最低賃金の引き上げに基本的には賛成である。
国民生活を守るために必要だからだ。我が社も政府が掲げる1500円に1日も早く近づけたいと思う。しかし、賃金水準だけを上げれば解決する問題ではない。
日本の経済は景気が悪ければ下請けを切り捨て、景気が良くなれば肥え太る構造を抱えたままである。そこに切り込まず、最低賃金だけを操作しても本質的な改革にはならない。

最低賃金の引き上げは「よし」としても、それは半端な政策に過ぎない。
中小企業の生産性を上げ、地方経済の持続性を支える仕組みと一体でなければ意味を持たない。中途半端な議論で終わらせてはならない。この最低賃金大幅改善をきっかけに、社会全体の構造改革へ進めるかどうか。そこが問われているのだ。ちょっと、力が入った。Goto

コメント