直木(すぎ)

花粉症について考える?
クリスマス。今年は雪も降らず。冷え込んで身体を奮わすこともない。随分穏やかで、暖かな気候。冬は冬らしく、夏は夏らしくあれと願う一人として、やはり、温暖化は気になる。この調子では、山の森の木の生態系が変り、樹木が怒り出すのではないか?心配だ。
私は鈍いのか、まだ悩まされてはいないが、日本全国約2000万人の患者とわれる「花粉症」。樹木は口を聞かないのないので分からないが、年明け草々から、花粉が飛び、苦しむ人が出るかも。
花粉症は目、鼻、喉などの粘膜に花粉が接触、炎症反応が起こる。厄介なのは、一度発症すると毎年悩まされる。初めて取り沙汰されたのが、1964年(東京五輪)、43年前。(森林総合研究所篠原健司氏)
アレルゲンという物質(タンパク質)が体内に吸収され、様々な反応を引き起こす。症状の引金は、粘膜上の特殊な細胞から放出されるヒスタミンや、ロイコトリエンなどの化学物質。これが神経を刺激、アレルギー症状の原因だと言われる。
アレルゲンはスギだけでなく、檜、ブタクサ、ヨモギなどのほか、リンゴ、白樺、イネなどの花粉でも見つかり、因果関係が明確なものだけでも50種類にのぼるという。スギ花粉が「悪者扱い」され、東京都石原知事はスギを伐採せよ。と声高だが?チョット乱暴だ。
日本の国土面積の約70%は山林。そのうち人工林が約40%。その半分がスギ林。
戦後の高度経済成長期、木材価格は高騰。山林家達は競って需要の高いスギ、ヒノキを植林。国も補助金を出し、奨励。拡大造林のこの時期、花を着けやすいスギ(元来、花や球果を多く着け、成長を妨げるスギからは種を取らなかった)の種も多く使われた。(岐阜県森林アカデミー原島幹典教授)
スギがスギ自身で、拡大、成長した訳ではない。人間の都合で、人工的に花や球果を多く着ける品種のスギを植林したのだ。スギ花粉症の原因を、原島教授は、「欠点を持つ木は植栽後、20年ほどで、特徴が現れるので、早めに伐採すべきだったが、林業不況で間伐が不十分」と人災説だ。
スギを伐採せよ。もいいでしょう。しかし、日本人とスギの関わりは深い。「日本書紀」には舟はスギ。宮殿はヒノキで造れとの記述もある。スギはヒノキやヒバと異なり、香りや色合いが控えめ。生活の中に溶け込んでいる。日本の急峻な山林で育ち、強い風や大雪にもめげず、ひたすら、上へ、上へと真っ直ぐに伸びる。
スギは「直木」ともよばれ、日本建築の主役であり、日本人の気質に合致している。果たして、スギを悪者扱いして、伐採すれば良いのか?二酸化炭素の吸収率でも、スギはたの樹木の群を抜くという。自分が困れば、何でもありには?閉口だ。
「お前は花粉症の辛さを知らないからだ」と叱られそうだが、国民の安全と豊かな暮しを保障するのは国家の仕事。43年も前から、原因の分かっている花粉症。アレルゲン退治の新薬に、コストをかけて欲しいものだ。
余りスギを悪者にすると、温暖化に乗って、スギが怒り出すかもしれない。
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