石巻日日新聞を読む愉しみ

ローカル新聞の使命・役割は重いものが、ある。

私は石巻日日新聞を定期購読している。といっても毎日ではなく、1週間分がまとめて届く仕組みだ。なぜ購読を始めたかといえば、近江社長の講演を聞いたからである。東日本大震災の折、石巻地区で90年以上の歴史を持つ夕刊紙・石巻日日新聞は、揺れで輪転機が故障し、印刷不能に陥った。
だが、「被災者に必要な情報をどうしても届けなければならない」と、社長を先頭に、記者たちは取材した記事を「壁新聞」として避難所に貼り出した。これぞジャーナリズムの原点だと私は感銘を受けた。

その後、私は石巻を訪ね、地域みっちゃく生活情報誌を石巻・東松島・女川で発行しないかと提案。震災から3年目の2014年3月11日、「んだっちゃ!」を創刊することができた。以来、地域社会に根ざした情報誌として、多くの人々に支えられている。

今や私は、毎週届く石巻日日新聞を愛読紙として目を通すのが楽しみの一つである。下手をすると、ふるさとを離れた石巻地方出身者よりも細かな地域情報に通じているかもしれない。ローカル新聞の役割とは、現状を伝えると同時に、地域の未来を考える材料を提供することだと、改めて実感している。

さて、この9月に報じられた話題を拾ってみたい。

まずは収穫の秋を祝う「ものふれあい祭2025 はねこ踊り」。桃生地区最大のイベントで、14日には6000人が来場。夕方から始まるパレードでは、老若男女が軽快な囃子に乗って跳ね回った。東北には青森のねぶた、秋田の竿燈など有名な夏祭りがあるが、この石巻のはねこ踊りも仲間入りできないかと夢想する。

次に驚いたのは「令和の歌姫」だ。仙台・鶴巻小学校1年生の大内日麻莉さん(6歳)が、石巻の老人ホームで昭和歌謡や童謡を披露。叔母の営む石巻駅前のカラオケ喫茶で修行を積み、子ども歌コンクールで入賞を重ねているという。美空ひばりの再来かと嘱望され、老人たちからは「ありがとう!」の嵐。本人は「みんなが歌で元気になってほしい」と無邪気に語る。その言葉通り、地域を元気にしている。

最後に少しシリアスな話題を。
石巻地方ではシカと車両の衝突事故が多発しているという。
昨年は263件の交通事故のうち40件がシカとの接触。熊ではなくシカにご用心、というのが石巻らしい。熊の被害が続く日本列島・何となく和む。

こうして紙面をめくると、石巻の空気や人々の息づかいが伝わってくる。新聞は地域になくてはならない存在であり、我々が発行する「んだっちゃ!」のような情報誌もまた、地域活性化のために欠かせない。石巻日日新聞を読むことは、単なる情報収集ではなく、地域の未来を考える愉しみでもあるのだ。

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