国は受賞者の声に真摯に耳を傾けよ。資金を制度化せよ。
大阪大学の坂口志文教授が、ノーベル生理学・医学賞を受賞された。免疫の暴走を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」の発見による功績だという。T細胞とは、体内に侵入したウイルスや病原体を攻撃する免疫の司令塔のような存在だ。
ところが、この防衛システムが過剰に働くと、敵ではなく自らの身体を攻撃してしまう。それが関節リウマチなどの自己免疫疾患である。
坂口教授は、この暴走を静める役割を担う「制御性T細胞」の存在を突き止め、免疫に“ブレーキ”をかける仕組みを世界に示した。まさに、病に苦しむ人々に新たな希望をもたらした発見である。
私もその恩恵を受ける一人だ。40代で関節リウマチを発症し、手の指から肘、股関節まで、次々と炎症に侵された。歩くことすら困難となり、56歳で右股関節の人工関節手術を受けた。
以来、20年以上、免疫を制御する生物製剤「アクテムラ」を月に一度投与している。リウマチの進行を抑え、今日もこうして元気にブログが書けるのは、坂口教授らの研究の積み重ねがあったからにほかならない。心から感謝申し上げたい。
奇しくも、私の親友の従兄弟が坂口教授であると聞き、あらためて人の縁の不思議を思う。彼の一族は代々医師で、地域医療を支えてきた家系だ。血筋とは不思議なものだ。優秀な人々が代々努力を重ね、科学の道を歩み、人類の未来を照らす。私はその恩恵に浴して生かされている。ありがたいことだ。
坂口教授は受賞会見で「日本の研究資金は欧米に比べ乏しい。若い研究者が専念できる体制を整えることが何より大事だ」と語られた。まさに至言である。基礎研究こそ文明の根幹である。
目先の成果ではなく、未来を見据えた支援を。文科省は「そうですね」で終わらせず、真に科学者のための制度を築くべきだ。政治家の役目かも知れぬ
サイエンスは、目的なきところに道を拓く。坂口教授の言葉を胸に、私たちも「人のために学び、支え合う」精神を取り戻したい。人類の未来は、こうした静かな情熱の上に築かれているのだ。坂口教授のノーベル賞受賞を祝す。
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