ACジャパン広告学生賞

心澄めば、偽り見抜く、目ぞ開く

10月の中旬、岐阜メモリアルセンターのウォーキングコースに金木犀の香りが漂いはじめた。甘く、やさしく、そしてどこか懐かしい香り。春のヒトツバダコ(なんじゃもんじゃ)の白花と並び、私の歩く楽しみの一つである。(動画を添付しました)

夏が長く、秋が短くなったとはいえ、この香りに包まれると「やはり秋だな」と心が落ち着く。自然の恵みに感謝しながら、一歩一歩、季節の移ろいを感じる。

さて、今回は「人は簡単に騙される」という話をしたい。
第21回ACジャパン広告学生賞で新聞広告部門のグランプリを取った作品をご存じだろうか。(写真参照)

「まずは左下をご覧ください」という文字と、右下を指す矢印。
私は、つい右下に目が行った。――なるほど、詐欺に遭うとは、こういうことかと膝を打った。人は思い込みで動く生き物。先入観の罠は、恐ろしく深い。

最近はオレオレ詐欺をはじめ、巧妙な手口が次々と現れる。標的は高齢者ばかりではない。誰もが「自分だけは大丈夫」と思っている時点で、すでに半分、罠の中にいる。詐欺は悪い。だが、騙される側にも隙がある。そこを突くのが人の世の怖さである。

では、どうすれば騙されぬか。
私はこう考える。――「世の中をよく知り、人間を深く知ること」だ。
情報に流されず、事実を自分の目で確かめる。

そして何より、自分の欲を見つめる。欲が強ければ、心は曇る。曇った心は、見抜く力を失う。詐欺とは、実は自分の中にある「油断」「慢心」「欲望」を突かれる行為にほかならない。

私の知人に、詐欺師を諭して改心させた人がいる。
曰く、「人を見抜くには、まず自分を磨け」。
目の奥を見つめる力、相手の声の震えを聞き取る感性は、日々の修養から生まれる。だが、その人もまた、何度も騙された経験を持つ。結局、人は失敗を通してしか、本当の警戒心を得られないのかもしれない。

金木犀の香りが、秋の風に運ばれてくる。
その清らかな香気のように、心を澄ませて生きたい。
疑うのではなく、見抜く。
怒るのではなく、悟る。
そして、どんな時も凛として、騙されぬ人間でありたい――。

心澄めば 偽り見抜く 眼ぞ開く
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