本気で働く環境を考えているのか
今月も今日まで、明日から師走に入る。年間でいちばん消費が拡大する時期。物流も流通も、ここぞとばかりに稼ぎどきである。中小零細の小売はクリスマス商戦で勝負をかけ、飲食店は忘年会・新年会に照準を合わせる。
しかし、ここで立ちはだかる難問が「担い手がいない」という現実だ。繁忙期にこそ働き手が必要なのに、その働き手が枯渇している。折角の予約を泣く泣くキャンセルする店もある。これでは地方経済が回らない。由々しき問題だ。
今回のテーマは、アルバイト・パートという形でも構わない。眠っている専業主婦の就業希望者103万人をどう光に当て、人手不足の中小零細企業に振り分けていくか、という話だ。総務省の調査によれば、2024年の専業主婦は508万人。大阪市と名古屋市の総人口に匹敵する規模である。
注目すべきは、そのうち103万人が「今すぐ働きたい」と希望している点だ。これは労働力人口の2%にあたる。2%が動くだけで、日本の中小企業の現場は劇的に変わるはずだ。
では、なぜ働けないのか?
専門家は「家庭状況」「家事・育児負担の偏り」を理由に挙げる。日本女性の無償労働時間は男性の5倍。欧米主要国の2倍。これが就業のハードルだという。最もらしい説明だ。否定はしない。確かに一面の真実だ。しかし私は、それが本質だとはまったく思わない。
第一に、この分析は総務省の数字である。総務省が専業主婦の実態を把握し、そのまま労働現場に「人材」として送り込む能力など最初から持ち合わせていない。役所の統計上の“数字”であり、現場の“実感”とはかけ離れている。
第二に、103万人は「働きたくても働けない」のではない。「働きたいと思う条件が社会に整っていない」のである。政府(特に厚労省)が、専業主婦が再び働くことに希望を持てる施策を講じていないのだ。これは政策不作為と言っていい。
第三に、雇用する側にも問題がある。
人手不足だから「誰でもいい、来てくれ」という雑な姿勢になってはいないか。働きたいと思わせる創意工夫を怠り、単に“穴埋め”のための採用をしている。そんな職場で誰が働きたいと思うだろうか。人が欲しいなら、まず「働きがい」を示さねばならない。
第四に、メディアの罪である。
専業主婦が働く価値や楽しさを伝えようとしない。むしろ「過重労働」「ブラック企業」「働くよりも家庭が大事」という論調ばかりを流し、労働への意欲を削いでいる。主婦層の可能性を、世論自体が押しつぶしているのだ。
こう考えると、この国の異常なまでの人手不足は、構造的に放置されてきた“怠慢のツケ”である。働きたい人を活かせず、困窮する中小企業を救わず、誰も動かないまま年だけが過ぎていく。
師走を目前に、なぜか物悲しい。
せめてこの時期くらい、本気で働く意志を持つ専業主婦に光をあてたい。彼女たちこそ、地方経済を救う“静かな主力部隊”なのだから。
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