積み重ね 積み重ねても また積み重ね

今日の怠慢に勝つ。明日の慢心を戒める。

いきなりですが。耐震構造理論の生みの親と言われ、東京タワー、名古屋のテレビ塔、大阪通天閣など数々の塔を設計した、内藤多仲先生をご存知か?私はよく存じ上げなかったが大変な偉人である。

先生の座右の銘「積み重ね 積み重ねても また積み重ね」にいたく感銘を受けた。人は誰でも、積み重ねの大切さを知っている。努力は裏切らない。
継続は力なり。凡事徹底。耳に胼胝ができるほど聞いてきた言葉だ。

しかし、内藤先生は一回では終わらせなかった。二回でもない。三回である。「積み重ね」で止めない。「積み重ねても」と自らを戒め、それでも足りぬと「また積み重ね」と重ねる。ここに真骨頂がある。5回言えば良いってものでもない。

人間は弱い。
一度やれば満足する。
二度やれば達成感に酔う。
三度目になると、面倒になる。
だが、塔は三本の鉄骨では立たない。
基礎の上に基礎を重ね、見えぬところを幾重にも固めてこそ、はじめて天を衝く。

戦後の荒廃の中で、先生が構造設計を担った東京タワー。
あの333メートルは、才能の産物ではない。計算に次ぐ計算、確認に次ぐ確認、失敗を許さぬ覚悟の積層である。三回繰り返すとは、「慢心を打ち砕く言葉」なのだ。

わが社もまた、塔を建てている。
鉄ではなく、紙で。

34都道府県、175誌、1250万部。(3月号)
紙のメディアが衰退する時代だ。数字だけ見ればそこそこだが、その一冊は、取材の一歩、営業の一声、編集の一字、印刷の一刷り、配布の一投函、無数の“ひとつ”の積み重ねの結晶である。

しかも、それを毎月やる。発行して終わりではない。
次号の企画が始まる。うまくいった号も、反省の号も、また積み重ねる。人間学的に言えば、積み重ねとは「自分に勝つこと」である。

昨日の自分の甘えに勝つ。
今日の怠慢に勝つ。明日の慢心を戒める。
一回では足りぬ。二回でも足りぬ。三回繰り返してなお、自らに言い聞かせる。総理大臣は働くを5回繰返したが。仕事と人生の要諦は、まさに「積み重ねる」この一語に尽きる。

派手な一発逆転はない。奇策もない。
ただ、積み重ね。積み重ねても。また積み重ね。地域の信頼は一夜にして築けない。だが、崩れるのは一瞬だ。

だからこそ、今日も一冊を丁寧に届ける。
豪雪の中でも、炎天下でも。塔博士の言葉は、構造学の教えであると同時に、人間の在り方そのものへの警句である。

我々もまた、三度繰り返し、自らに言い聞かせたい。積み重ね。積み重ねても。また積み重ねと。その先にしか、本物の塔も、本物の信頼も立たないのである。私も座右に「積み重ね 積み重ねても また積み重ね」を置く。Goto

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