どんな子育て施策なら少子化は止まるのか?
4月、新しい子育て支援制度「子ども誰でも通園制度」が全国でスタートした。ここに至るまで、日本は長く「保育の壁」と向き合ってきた。
2016年、「保育園落ちた日本死ね」との匿名ブログが社会に衝撃を与えた。あの叫びは一過性の感情ではない。子どもを育てながら働こうとする親たちの、切実な現実そのものであった。
待機児童問題、保育士不足、制度の硬直。子育てと仕事の両立は、努力だけでは越えられない構造的課題であった。
その後、政府は段階的に制度改革を進めてきた。幼児教育・保育の無償化(2019年)を皮切りに、保育の受け皿整備、こども家庭庁の創設(2023年)へと続く。
そして岸田内閣が掲げた「次元の異なる少子化対策」において、従来の「保育園に入れるか否か」という発想を転換し、「すべての子どもに居場所を」という理念のもと、本制度が制度化されたのである。
対象は生後6カ月から3歳未満の未就園児。これまで支援の谷間に置かれてきた層に、光を当てた点に大きな意義がある。
専業主婦であっても利用でき、月10時間まで、1時間300円程度で通園が可能。自治体や専用サイト「つうえんポータル」から申し込み、施設も柔軟に選べる。2024年度から試行され、2025年末には231自治体に広がり、満を持して全国展開となった。
この制度の本質は、単なる「預かり」ではない。子どもは家庭の外で多様な人と関わることで社会性を育み、親は孤立から解放される。育児の負担軽減だけでなく、「子どもを社会で育てる」という思想への転換である。
財源もまた、新しい枠組みで支えられている。運営費の半分は公費、残りは「子ども・子育て支援金」として医療保険料に上乗せされる。社会全体で子どもを支えるという覚悟の現れであろう。
もっとも、課題がないわけではない。現場の受け入れ余力、自治体の人的負担、制度の認知不足。だが、採算が合い、現場に志があれば、乗り越えられぬ壁ではない。むしろ問われているのは、制度をどう生かすかという我々の姿勢である。
日本は、制度だけ見れば決して子育てに冷たい国ではない。ここまで手厚い仕組みを整えてもなお、少子化は止まらない。この現実をどう受け止めるか。
人はなぜ子を持つのか。
それは本能であると同時に、未来への意思表示でもある。自らの時間と労力を投じ、次の世代へ命と価値をつなぐ営み。その尊さを、どこかで見失ってはいないだろうか。
制度は整った。環境も整いつつある。
あとは、人間の側の問題である。
子どもを育てるとは、単なる生活行為ではない。社会をつくり、歴史をつなぎ、自らが「祖先」となる覚悟の表れである。
この制度が、単なる利便性に留まらず、人が人として生きる意味――その根源に、静かに光を当てることを願ってやまない。


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