「ふりかけ」に学ぶ日本人の知恵
東海地方もようやく梅雨明けした。まだ気象庁は発表してないが・・・
何をもたもたしているのか。誰がどう見ても夏なのに。昔から「梅雨三日」と言う。梅雨が明けた三日間は一年で最も暑い。先人は天気予報もない時代から、自然を観察し、その営みを言葉として残してきた。
ところが今はどうだ。テレビをつければ「猛暑」「酷暑」「命に関わる危険な暑さ」の大合唱である。朝から晩まで不安を煽る報道ばかり。注意喚起は必要だが、暑さそのものより、暑さへの恐怖心を植え付けてはいないか。
人間は環境に適応する力を持っている生き物である。暑いから工夫する。暑いから知恵を出す。それが日本人ではなかったか。
面白い話を聞いた。
体温を効率よく下げるには、心臓に近い「胃」を冷やすことだという。だから、かき氷やアイスクリームを食べると涼しく感じる。冷や麦やそうめん、水茶漬けが夏の定番になったのも、先人たちの経験が生んだ生活の知恵なのだろう。
そして、今日の主役は「ふりかけ」である。
ご飯にさっと振りかける、あの脇役が、いま静かなブームだ。2025年の市場規模は約560億円。この五年間で一割伸びたという。背景にあるのは物価高である。
ふりかけ一袋あれば、ご飯がおいしく食べられる。おかずは一品減っても満足感は落ちない。調理の手間も省ける。共働き世帯にはありがたい存在だ。人はよく「節約」と言う。しかし、本当の節約とは、お金を使わないことではない。少ないお金で最大の価値を生み出す知恵である。
ふりかけは、その知恵の象徴だ。
そもそも、ふりかけは日本が生んだ食品である。大正時代、子どもの栄養不足を補い、食欲を増進させるために考案された。私も「のりたま」には随分育ててもらった世代だ。
ところが今や主役は「おとなのふりかけ」である。わさび、本かつお、紅鮭、牛しぐれ、焼きたらこ、海苔。素材にこだわり、大人の舌を満足させる逸品が並ぶ。平均価格は171円。五年前より約二割高くなった。それでも売れる。
消費者は賢い。
安いから買う時代ではない。「価格以上の価値」があるかどうかを見極める時代である。
これは商売の原点でもある。
値引きばかり繰り返す企業は、やがて自らの価値を否定する。価格を下げる努力ではなく、価値を高める努力こそが企業の使命なのである。
最近では、ふりかけは訪日外国人にも人気のお土産だという。千円以下で買え、日本らしさがあり、軽くて持ち帰りやすい。日本人が当たり前と思っているものに、外国人は価値を見出している。これは実に示唆に富む話ではないか。
さて、夏バテ気味のご同輩。温かいご飯に、お気に入りのふりかけを振る。そこへ冷たい水やお茶をかけ、さらさらと流し込む。胃が冷え、食欲も戻る。そんな話を友人にしたら、「それはいいが、胃薬も忘れるな」と笑われた。
なるほど、それも知恵である。
人間学とは、自然に学び、先人に学び、日々の暮らしに学ぶ学問である。暑い、暑いと嘆くだけでは何も変わらない。知恵を働かせる者は、この酷暑さえ味方につける。今年の夏は、「ふりかけ」に日本人の底力を教えてもらおうではないか。
暑さは誰にも平等である。しかし、その暑さをどう受け止め、どう工夫して生きるかは、人間力の差である。日本人の知恵で、この夏を堂々と乗り切りたい。」Goto


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