最低賃金こそ景気回復の切り札ではないか
中央最低賃金審議会は、今年度の最低賃金(時給)の引き上げ額の目安を、全国加重平均で55円、4.9%増の1176円と決めた。昨年度の63円を8円下回ったとはいえ、5年連続で大幅な引き上げが続くことになる。
今回の議論で興味深かったのは、労働者側も経営者側も、ともに「中東情勢の悪化」を根拠にしながら、全く逆の結論を導いたことである。
労働者側は、エネルギー価格や生活必需品の高騰が家計を直撃している以上、全国平均75円の引き上げは必要だと主張した。一方、経営者側は、資材価格や輸送費の上昇で企業経営は厳しく、小幅な引き上げにとどめるべきだと訴えた。
どちらにも一理ある。しかし、その妥協の産物が今回の55円だったと言えるだろう。
私は、この局面では、もっと大胆な決断が必要だったと思う。
高市政権は、最低賃金1500円の達成時期を「30年代前半のできる限り早期」と位置付け、従来より時間軸を後ろへ移した。背景には、中小企業への配慮や物価上昇率の落ち着きへの判断があるのだろう。
しかし、本当に物価高は落ち着いているのだろうか。スーパーへ行けば食品は高い。電気代もガソリン代も家計を圧迫している。中東情勢も依然として不透明で、エネルギー価格が再び上昇する懸念は消えていない。国民の生活実感と政府の認識には、なお隔たりがあるように思えてならない。
しかも、国の税収は物価高や企業業績を背景に過去最高水準を更新し続けている。令和8年度予算では国税収入は約84兆円が見込まれている。
これだけ税収が伸びているのであれば、その果実を国民へ還元する政策があってしかるべきではないか。
最低賃金は、政府が民間の賃金水準に最も直接働きかけることのできる制度である。だからこそ、「鶏が先か、卵が先か」の議論を繰り返している場合ではない。
賃金が上がれば消費が伸びる。消費が伸びれば企業収益が改善し、新たな投資が生まれる。そして税収もさらに増える。この好循環をつくることこそ、景気回復への王道ではないか。
もちろん、中小企業への支援は不可欠である。価格転嫁の徹底、社会保険料負担の軽減、設備投資への支援などを組み合わせながら、賃上げを後押しすべきだ。
最低賃金1500円は、単なる数字ではない。「働けば生活が豊かになる」という希望の象徴である。
今、日本に必要なのは、慎重さよりも未来への投資である。最低賃金の大胆な引き上げを、景気回復の最大の目玉として打ち出す。その政治決断こそ、国民生活を立て直す第一歩になると、私は信じている。Goto


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