牧水の悲恋

毒の香(かう)君に焚かせてもろともに死なばや春のかなしき夕べ・・
「新聞命」(しんぶんいのち)の私です。
朝・ポストに新聞が届かない。休刊日ほど、淋しい一日はありません・・
まるで恋する人を待ち焦がれる若者のように・・その日は夕刊が配達されるのを待ちます。
朝刊が休刊日の夕刊は通常の読み物中心の夕刊とは違います。
今日の出来事に加え、まるでデートの約束を破った人が詫びるかのように・・
昨日のニュースも掲載されます。取り分け、日曜のスポーツが大見出しで・・・
そんな、言い訳しなくても、月に一度の休刊日です。わかってるのに・・
我が社では・・もう10年近くなりますが、全社員が朝日新聞の一面に掲載されるコラム、
天声人語を書写しています。なぜ、読売の編集手帳じゃなく、日経の春秋でもなく・・
朝日の天声人語なのかとよく聞かれます。
理由は大学受験の出題に最も採用されるコラムだからです。
広告の仕事は提案力が大きな役割を占めます。その為には、世の中の話題を
少し斜に構えて・・「斬る」・・朝日的発想が脳の刺激になると思っているからです。
全社員に書写をしましょうと、推奨する私が申し上げるのも如何なものかと思うのですが、
最近の天声人語、味が出てきてなかなか良いと思っています。最近のと申すのは、
現コラムニストが書き始めた頃は読めたものではありませんでした。
直ぐに政府に噛み付き、批判のための批判ばかり・・・
朝日新聞とは権力を監視する新聞だ。だから、政権を批判するのは当然です。
でも、天声人語は批判しても記事と同じ理屈で批判するなら、要らない。
天声人語はニュースではないのです。
政府や権力を批判するにも、ひと味もふた味も、捻ると申しますか、
思わず「そうだねぇ」と唸る味わいがなければならないと思っています。
でないと、大学受験に出題する価値がありません。
それが最近は読むのが楽しい・・・良い味がでてきました。
11/5付・・・「牧水の悲恋」とでも題しましょうか。
若山牧水の一途な道行きを・・コラムニストとの叶わぬ夢と結び付け
深まり行く秋を書き込んでいます。いいじゃないですか・・
自分のものは自分のもの、人のものも自分のものと・・
年上の人妻に焦がれ略奪し別れる心の様相の歌を・・・613文字に。
いいじゃないですか。コラムニスト氏、味が出てきました。
牧水の悲恋歌です。
「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」
「白鳥は哀しからずや海の青空のあをにも染まずただよふ」
「山を見よ山に日は照る海を見よ海に日は照るいざ唇を君に」
「海底に眼のなき魚の棲むといふ眼のなき魚の恋しかりけり」
私は・・・牧水といえば・・
コラムニストが遠慮して敢えて書き込まなかったこの歌が悲恋の究極ではと思っています。
「毒の香(かう)君に焚かせてもろともに死なばや春の悲しき夕べ」
でも、悲恋といえば私は・・・与謝野晶子の「みだれ髪」・・
「柔肌の熱き血潮に触れもみで寂しからずや道を説く君」が
我が青春の墓標と些か重なり・・・いちばんだと思うのです。
天声人語頑張れ・・・・新聞は良いですねぇ。Goto

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