パーシャル連合の始まり・・・

新聞の立ち位置が、民主主義を成熟させる・・・

石破首相が7日、退陣を表明した。参院選の投開票から50日。政治は混乱が続いた。自民党の歴史的敗北。日本文化では、戦いに敗れた将は潔く責任を取る。
それだけで十分・理由などいらないはずだ。だが、石破氏は米国との関税交渉を盾に居座り続け、退陣のタイミングを見誤った。その一点が、混乱を長引かせた。

石破氏は5度も総裁選に挑み、ようやく掴んだ座である。
そう簡単に手放したくはなかったのだろう。その執念と粘り強さは見上げたものだが、結果的に自民党の求心力を一層失わせた。

今回の退陣劇で二つのことがはっきりした。
一つは、自民党一強時代の終焉である。衆参いずれでも、もはや単独で過半数を維持することは難しい。これからはパーシャル連合ーー部分的な連立が常態化し、権力の独占は不可能になるだろう。政治の針は確実に進んだ。

もう一つは、ナショナリズムの台頭だ。米国ではトランプが「アメリカファースト」を掲げ、欧州でも右翼政党が勢力を拡大している。日本も同じ流れにある。
右傾化は現実であり、政治のうねりとして無視できない。新聞各紙も承知しているが、その点を明確に書こうとはしない。

8日の朝刊を並べて読むと、メディアの立ち位置がよく見える。
朝日は「日本型の民主主義が必要」と控えめに論じ、毎日と共同通信はさらに踏み込みを避ける。読売は「自民再建へ正念場の総裁選」と強調し、連立拡大による安定を説くのが精一杯だ。日経は「民意不在の権力闘争」と厳しく指摘する。
確かに本質をついている。こうして見比べると、一強体制の終わりを薄々理解しながらも、明言を避けていることが分かる。

この秋、メディアは自民党総裁選一色になるだろう。
権力闘争は視聴率も取れるし、記事も読まれるからだ。
ただし「自民党総裁=総理大臣」という方程式が揺らいでいることを忘れてはならない。次の首相は、国会内の連立工作や世論のバランスで決まる。
極端な右翼的人物が総理に座るのは難しいだろう。
一方で、一定の政治経験も欠かせない。結局、候補者は自ずと絞られていく。

石破首相の退陣は、ひとりの政治家の執念の終わりであると同時に、
日本政治の大きな転換点である。自民党一強の時代は幕を閉じ、これからは複数の勢力が拮抗しながら政権を運営していく。混乱を伴うとしても、それが民主主義の成熟の姿なのかも知れない。私は新聞の頑張りを期待したい。Goto

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