広告は奥深い

全文英語の新聞広告…誰に伝えたいのでしょうか?
私は広告のプロです。そりゃ40年広告の仕事をしているのですから、
当然と言えば当然ですが、とても奥深くてなかなかプロの域には到達しないのが現実です。
広告は「社会の写し絵」であると同時に人間の行動に訴える手法です。
そんな私が、最近チョッピリ驚いた広告、それが朝日新聞に掲載された下記紙面です。
全編、英文です。安室奈美恵さんの写真とスポンサー名から、
飲料水の広告ということは分かりますが、読み込むにはかなり面倒です。
新聞広告には、広告主が明確であること。表記が読者に伝わること、
公序良俗に反しないことなど、いくつかの最低条件があります。
もちろん、朝日新聞も同様です。最近は結構際どい広告も掲載しますが、
紙面には条件は守られています。それが新聞広告の信頼です。
この広告に何か大きな問題があるわけではありませんが、
はっきりしているのは、全編英文であり、読者に不親切であること。
それと、安室さんが引退するにあたって、彼女がCMキャラクターだったことで、
商品のイメージが上がり大ヒットしたことへの感謝が綴ってあるのだが…
であればこそ。なぜ、日本語で感謝しないのか。飲料水を飲んだのは誰か?
そうすれば、読者もスポンサーの誠意を理解し、素晴らしい企業だと思うのに。
「Don’t wanna cry」がCMソングだったことも、50曲以上の楽曲のタイトルが
引用され、彼女の引退を惜しみつつ心からの感謝が伝わるのに。
広告制作の舞台裏、スポンサーと代理店、クリエイターのやり取りが目に浮かぶようです。
「全英文では読者に分かりにくいのではないか」「いや、今までにない全英文コピーだから
インパクトがあるのです」「上と相談してみる」「いや広告担当のあなたが理解せねば」
そんなやり取りが締切ギリギリまで続いたのではないか。
結果は上層部のGoがでて掲載なんでしょうが。
広告の意図は「これまでの安室奈美恵さんへの感謝」と「これからの安室奈美恵さんを
応援したいというメッセージを込めた紙面だとネット上で紹介されています。
ということは、至って個人的と申しますか、安室奈美恵さん一人に向かっての
広告ってことです。それならそれで、ご勝手にですが。
豈図らんや、この紙面がネットオークションに掛けられ100円から150円の
値がついているそうです。何年広告の世界にいても、わかないことだらけです。
広告って、凄い。面白い。奥が深いと思うこの頃です。Goto
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9/4朝日新聞

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