レアアース

中国がレアアースを武器に、再び世界を揺さぶろうとしている。

レアアースは電気自動車、医療機器、産業用ロボットなど、現代文明の中枢を支える鉱物資源だ。中国はその生産量の約7割を占め、日本は輸入量の6〜7割を中国に依存してきた。

思い出されるのは2010年、尖閣諸島を巡る問題をきっかけに、中国が対日レアアース輸出を停止した一件である。そして今回、高市首相の台湾有事を巡る国会答弁に反発し、再び輸出規制を強化すると脅してきた。まったく、またぞろ、である。

政府は備蓄で対応すると言う。未公表ながら半年から1年程度は備えているとされる。しかし、仮に1年間輸出が止まれば、日本の産業は約2兆6000億円の損失を被り、GDPは0.4%押し下げられるという。数字は冷静だが、現実は冷酷だ。

ここで叫ばれ始めたのが「経済安全保障」である。中国依存度は2010年の90%から、2024年には63%まで下がった。だが、私は素直に評価する気になれない。15年だ。この間、安いからという理由だけで中国依存を続ける企業に、メディアは警鐘を鳴らしてきただろうか。経済安全保障を軽視してきた責任は、政治だけでなく、メディアにもあると私は思う。

もちろん政治も同罪だ。安全保障を声高に語り、右傾化を是とするなら、なぜ経済摩擦が不可避となる資源問題に、徹底して手を打ってこなかったのか。威勢の良い言葉と、足元の現実が乖離していたと言わざるを得ない。

ただ、希望がないわけではない。南鳥島沖で国産レアアース開発が動き始めた。内閣府主導で探査船が出港し、2030年頃には商業採掘が始まるという。ジスプロシウム、ネオジム、ガドリニウムなど、複数のレアアースが高濃度で確認されている。遅すぎるとは言わない。だが、やっと、である。

中国は資源を武器にする国家だ。それを善悪で裁くつもりはない。問題は、それを分かっていながら、備えを怠ってきた日本の側にある。舐められる国であってはならない。経済もまた、安全保障そのものなのだ。

映画やドラマの見過ぎだと笑われるかもしれない。だが、現実を見れば、情報は容易に漏れ、機密は驚くほど簡単に把握されてしまう時代である。サイバー空間も含め、開発の安全は誰が、どこまで担保しているのか。そこまで踏み込んだ議論が、果たして国民に示されているだろうか。

一方で、G7や資源国などによる財務相会議では、レアアースを含む重要鉱物について閣僚級協議が行われた。有志国が連携し、サプライチェーンを整備、中国への依存度を引き下げることで一致したという。方向性としては正しい。しかし、相手は中国である。建前や声明だけで物事が進む相手ではない。絵に描いた餅に終わらぬことを、切に願う。

経済安全保障は、政府や官僚だけに任せておけばよい話ではない。我々国民一人ひとりが、「経済とは何か」「豊かさとは何か」「守るべきものは何か」を、真剣に考える時代に入ったのだと思う。

平時の選択が、有事の弱さをつくる。そのことを、私たちはもう一度、肝に銘じるべきではないだろうか。Goto

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