超高級ボールペン

一本のボールペンが企業を変える

あなたの机の引き出しに、ボールペンは何本ありますか。私は先日、数えてみて驚いた。自宅の小さな書斎の筆立て、机の引き出し、居間の筆入れ、そして会社の机。合わせて20本以上もあったのである。

思い出すのは、半世紀近く前に伺った岐阜県のある優良企業の経営者の話だ。ある朝突然、秘書に段ボール箱を持たせて営業部の大部屋に現れた。

「引き出しを開けたまえ」
社員一人ひとりの机を見て回る。
「君、ボールペンを何本持っている。両手で使っても二本だろう。黒と赤があれば十分ではないか。残りは返しなさい」

ホッチキスが二つあれば一つ回収。ものさしも消しゴムも、本当に必要な物以外は徹底的に整理した。その後は文具に限らず、備品管理を徹底したという。

私はその話を聞いた時、少々やり過ぎではないかと思った。しかし、その会社は後に岐阜県を代表する優良企業へと成長した。無駄を放置しない姿勢が、企業体質を強くしたのであろう。

一方で、ボールペンには夢もある。
学生時代、ゼブラの透明軸ボールペンが登場した。インクの残量が見えるだけで新鮮だった。大切に使った記憶がある。

そのゼブラが今度は税込み5万9400円の超高級ボールペンを発売した。アルミのボディーを一本一本削り出し、職人が一時間以上かけて波紋模様を刻む。インク残量が見える構造や滑らかな書き味など、創業以来の技術を結集した逸品だという。銀座の有名文具店では発売後すぐに完売し、予約待ちになったそうだ。

ゼブラは安くて高品質な商品で知られるメーカーである。そのゼブラが、あえて「高級」ではなく「超高級」にこだわった。技術の集大成として世に問うたのである。
たかがボールペン、されどボールペン。
超高級品を一本持てば、それだけで十分なのか。それとも飾って眺め、普段は100円のボールペンを使い捨てるのか。

考えてみると面白い。
私は超高級ボールペンには縁がない。しかし、机の周りに散らばる20本のボールペンを見ながら思う。大切なのは値段ではなく、最後まで使い切ることではないか。
モノを粗末にしない。必要なものを必要なだけ持つ。
一本のボールペンにも、その人の生き方が表れるのかもしれない。Goto

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