神無月、神様の全国大会

会議の内容は「ご縁」についてだそうです。

あなたは10月にどんなイメージをお持ちですか?
秋の夜長を楽しむ「読書の秋」、プロ野球のクライマックスシリーズや運動会に代表される「スポーツの秋」、それに豊かな実りをいただく「食欲の秋」。でも、近頃の私には“滋味の秋”と呼ぶのがしっくりきます。秋の恵みを飾り気なく、そのまま味わうのが何よりの贅沢。

とはいえ、芸術には疎い私でも「芸術の秋」という言葉だけは耳に心地よく響きます。なぜそう言うのかといえば、やはり空気が澄み、心が落ち着く季節だからでしょう。人の感性が一番鋭くなるのが秋、ということかもしれません。

私にとっての秋といえば「月」です。中秋の名月に、岐阜城を照らす光を眺めながら、縁側にすすきを立て、芋団子を肴に岐阜の銘酒を冷やで一献。遠く虫の声が響けば、まさに“これぞ秋”。日本人に生まれ、岐阜に育てられて良かったとしみじみ思う瞬間です。まだ思っているだけですが・・・

さて、10月は旧暦で「神無月」と呼ばれます。ご存知の通り、全国の八百万の神々が島根の出雲大社に大集合するから。普段は鎮座する神社を留守にするので“神無月”。逆に出雲地方では“神在月”と呼ぶのが面白い。まさに神様たちの全国大会です。

この時期に吹く風には「神渡し」「神立つ風」「神送り」「神の旅」と、実に情感豊かな名前がついています。なんと詩的な感性でしょう。台風だって、遅刻気味の神様を運ぶために吹くのだと思えば、少しは腹も立ちません。

出雲大社では10月10日から一週間「神在祭」が開かれます。内容は来年一年間の“ご縁”を話し合う会議。縁結びで名高いのはもちろんですが、恋愛に限らず、仕事・健康・人間関係・学業と、あらゆる祈願がここで決まる。全国の神社で授かるお札も、この会議の結果だと思うと、なかなか味わい深い話です。

地元の人々は祭りの間、神様の会議の邪魔をしないよう、慎ましく過ごすそうです。そして、晴れ渡る秋空に心地よい風が吹けば、神様たちが立ち去る合図。そこまでの間に良縁を結んでもらえるようにと、陳情の思いがあふれるのです。

こう考えると、政治も経済も社会の行方も、10月出雲の会議で決まっているのかもしれませんね。困った時の神頼み。なんとも日本的で、愉快な発想です。

どうですか? 10月は、秋の夜長に月を愛で、出雲に集う神々を思い、ふるさとに感謝する季節。黄昏を嫌う人もいるでしょうが、私はこの国の秋を楽しみ尽くしたいと思います。Goto

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