中国に手玉にされているのは日本政府とメディアだ!
パンダを返せ――貸与契約なのだから返還は当然だ。理不尽も何もない。
どうぞお引き取り下さい。それが契約、法を守るってこと。お前も守れよな。
それを、まるで生き別れの家族を奪われるかのように騒ぎ立てる日本の報道には、正直うんざりする。それは国民の願いだのような扱いにも。
50年も日本で飼育され、子や孫まで生まれ、日本の風土で育った。情が移るのは分かる。だが、それと政治は別だ。パンダは「友好の象徴」などではない。中国共産党が一貫して使ってきた、極めて分かりやすい政治の道具である。珍獣を貸し与え、歓心を買い、言うことを聞かせる。
人類史を見渡せば、権力者が動物を使って取り入った例など枚挙にいとまがない。中国五千年の歴史において、計略としてそれを用いるのは、むしろ自然ですらある。十八史略にある。
問題は中国ではない。
問題は、それを「かわいい」「見るだけで癒される」なんてバカ騒ぎで消費し、政治的文脈を一切語らない日本のメディアと、それを疑いもせず受け取る空気だ。
上野動物園に人が殺到する。
パンダ見たさに返却となって行列をつくる。
私は国民を疑う。
その同じ国で、エサを失ったクマが人里に降り、人を襲い、駆除されている現実がある。背に腹は代えられないと山を下りてきた命と、ありとあらゆるエサを与えられ、厳重に守られる白黒のクマ。この落差を、誰が真剣に考えているのか。
もしツキノワグマやヒグマを白黒に塗り、パンダと名付ければ、同じように手厚く守られるのか。そんなはずはない。結局、私たちは「物語」と「記号」に弱すぎるのだ。
パンダ返還を大騒ぎする一方で、中国が台湾をどう扱っているか、香港で何が起きたか、新疆で何が行われてきたか。そうした現実には驚くほど鈍感だ。
もし日本政府が「台湾は中国のものだ」と明言すれば、翌日には全国の動物園にパンダが溢れるだろう。そんな皮肉が笑い話に聞こえないところに、この国の危うさがある。
パンダ騒動など、所詮はクマ一頭の話だ。
だが、その裏にある権力への偏狭さと、それに無批判に乗っかる報道姿勢は、決して小さくない。
パンダが去って、せいせいする。そう言って何が悪い。
必要なのは感傷ではない。自分の頭で考えることだ。
かわいい映像に拍手する前に、その背後で誰が笑っているのか――それを見抜く力を、そろそろ取り戻すべきではないか。でないと日本は良い国ですねぇと笑われて相手にされなくなる。パンダ騒動を斬る。Goto



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