色には人を動かす力がある。
梅雨入りした。紫陽花は雨に打たれて色を深め、山々は若葉から濃い緑へと衣替えを始める。私はこの時期になると、自然が織りなす色の移ろいに心を奪われる。
株価が過去最高値を更新した。背景には中東情勢の緊張緩和への期待や、企業業績の底堅さ、投資マネーの流入などがある。市場は常に半年先を見ていると言われる。投資家たちは、イラン戦争の収束やエネルギー供給の安定化を先取りしているのかもしれない。
一方で、現実の暮らしの現場では石油危機の余波が広がっている。
中東危機の影響で印刷用インクの調達が不安定となり、カルビーは一部商品の包装をカラーから白黒印刷へ切り替えた。石油由来の包装資材も高騰し、食品メーカーやスーパーではパッケージの見直しが進んでいるという。
小売店の棚から色が消える。そんなことは考えたこともなかった。ポテトチップスの価値は中身だけで決まるものではない。手に取った瞬間の期待感や美味しそうに見える演出、いわゆる「シズル感」も商品の重要な価値である。カラフルな袋は食欲を刺激し、購買意欲を高める。マーケティングの基本である。
カルビーほどの知名度があれば白黒になっても売れるだろう。しかし認知度の低い商品にとっては死活問題になりかねない。
それにしても、モノトーンばかりの売り場は少し寂しい。社会全体が暗く沈んでしまうような気がしてならない。
もちろん、ものづくりの現場は必死である。コスト削減に知恵を絞り、生き残りを懸けている。その努力には頭が下がる。むしろ、この危機を契機に新しい包装技術やデザイン革命が起きるなら、それは怪我の功名でありイノベーションと言えるだろう。
だが私は思う。石油危機への対応として本当に手を付けるべきは、火力発電や自動車燃料など大量消費の分野ではないのか。包装紙の色を消すことは枝葉末節に見えてしまう。
話がそれた。
今日は「カラー」の話である。昭和歌謡のヒットメーカー、作詞家・橋本淳さんの訃報に接した。
橋本さんほど色を歌にした人はいない。
「黄色いレモン」「青いリンゴ」「ブルー・シャトウ」「亜麻色の髪の乙女」そして極め付きは、石田あゆみさんの「ブルー・ライト・ヨコハマ」である。
♪街の灯りが とてもきれいね ヨコハマ
音痴の私でさえ口ずさめる。橋本さんは後年、この歌に「今日の幸せ」を込めたと語っている。色には人の心を動かす力がある。昭和という時代が戦前の暗闇を乗り越え、豊かさへ向かって歩み始めた背景には、街に溢れる色彩への憧れもあったのではないか。
今の日本には、どこか息苦しさと閉塞感が漂う。そんな時代だからこそ、食品の包装から色が消えることが、単なるコスト削減以上の意味を持って見えてしまう。
色は希望である。
色は元気である。
色は未来である。
梅雨空の下でも紫陽花は鮮やかに咲く。雨に濡れた葉は輝きを増す。だから私たちも下を向いてばかりいてはいけない。カラフルな服をまとい、街へ出ようではないか。
私は青が好きだ。
故郷・岐阜を流れる長良川の清流の青。
どこまでも澄み切ったその青さを見るたびに、人はまだ前を向けるのだと思う。カラーとは、人生そのものなのかもしれない。橋本淳氏のご冥福をお祈りする。Goto


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