台風6号が列島をかすめて過ぎ去った。
大きな被害もなく、我が故郷・岐阜では樹木や田畑を潤す慈雨となった。梅雨入りである。雨は鬱陶しいと敬遠されがちだが、日本の自然にとっては命の水だ。田植えを終えた田んぼを満たし、山々の緑を濃くし、やがて実りの秋へとつないでいく。
6月は春と夏の狭間にある。季節が静かに移ろう、この時期ならではの風情を味わいたい。
花ならば薔薇だろう。
6月2日は「ローズの日」。岐阜県可児市には日本有数の薔薇園、ぎふワールド・ローズガーデンがある。世界各国の数百品種の薔薇が咲き競い、その香りと美しさは圧巻だ。近いうちに訪ねてみようと思っている。
そして6月の主役はやはり紫陽花である。
6の付く日に紫陽花を一輪、軒下に逆さに吊すと厄除けや魔除けになるという言い伝えがある。トイレに吊せば婦人病予防になるとも言われる。紫陽花は有毒植物であり、その毒が病や災いを跳ね返すとの信仰から生まれた風習らしい。花色が変化する紫陽花は人生そのものだ。
人もまた年齢と経験を重ねながら変化していく。変わることを恐れず、自然の摂理として受け入れることが大切なのだろう。
6月10日は「時の記念日」である。1920年(大正9年)、時間の尊重と厳守を目的に制定された。しかし、日本人が昔から時間に正確だったわけではない。
江戸時代までの日本は季節によって時間の長さが変わる「不定時法」で暮らしていた。城や寺の鐘の音で時を知り、今から見れば実におおらかな生活だった。
それが1872年(明治5年)に新暦が採用され、一昼夜を24時間に区切る「定時法」へと改められた。近代化を進める中で時間を守る文化が根付き、日本人は世界でも類を見ないほど時間に厳しい国民となった。世界へ躍り出ることができた背景には、この時間意識の改革もあったのだろう。
6月22日は夏至。
一年で最も昼が長い日である。冬から春へ、春から夏へと伸び続けた日脚のクライマックスだ。夕暮れが遅くなるこの時期は、何となく得をした気分になる。
石油危機によって、私たちは改めてエネルギーの大切さを痛感している。だからこそ、世界中で行われている「キャンドルナイト」の考え方に共感する。電気を消し、ろうそくの灯りだけでゆったりと過ごす時間。便利さを少し脇へ置き、人と語り、家族と向き合い、自分自身を見つめ直す。
カナダから始まった節電運動だが、日本でももっと広がってほしい。地域に情報を届ける我が社の仕事も、そんな豊かな暮らし方を提案することにあると思う。
そして6月30日は夏越の祓である。
一年の折り返し地点。新年から積み重なった罪や穢れ、知らず知らずのうちに背負った疲れや迷いを祓い、残る半年の無病息災を願う神事だ。神社には茅で作られた大きな輪が設けられ、人々はこれをくぐり心身を清める。
人生も同じだ。時には立ち止まり、自らを振り返り、軌道修正を行うことが必要である。私は人間学の基本を「自分と自分の周りの人々の幸せの為にいきる」ことだと思っている。
薔薇を愛で、紫陽花に季節を感じ、時を大切にし、夏至の長い夕暮れを楽しみ、夏越の祓で心を整える。日本の四季は実に豊かだ。だからこそ季節に学び、自然に感謝し、人に寄り添いながら生きていきたい。6月の歳時記。雨に煙る山々を眺めながら、そんなことを考えている。Goto


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